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海外だより

2024年度版オーストラリアで家を借りる

昨年の初めに掲載した「オーストラリアで起業する」というエッセイを読んでくださった方からメールを頂き、「ケアンズで賃貸物件を借りる方法」について尋ねられた。不動産屋をやっているので、常に頂く質問でもある。2011年に「オーストラリア住宅事情~ケアンズで家(部屋)を借りる」というエッセイを掲載させて頂いたが、あれから13年経ち、オーストラリアの不動産市場も変わってきているので、今回は「2024年度版、オーストラリアで家を借りる」お話をしたいと思う。

「不動産会社を訪ねれば、車に乗せて希望に合う物件を複数案内してくれる」というサービスは、残念ながらオーストラリアでは期待できない。2024年2月現在、オーストラリアの賃貸空室率は1%(100件の賃貸物件のうち、空室は1件)。空き物件に比べ、借りたい人の数がはるかに多い。一つの募集物件には数十組からの問い合わせが入るのが常だ。また賃貸開始時に不動産会社は物件オーナーに手数料をチャージするが、借りる人からは手数料を取らないというシステムのため、「私は家を借りてあげるお客様」というスタンスで不動産会社に期待していると、ガッカリする可能性が高いということは理解しておいた方が良い。

シドニーなど日系企業が多い地域では、現地日本人経営の不動産会社が、駐在員のために賃貸住宅探しを有料で代行する場合もあるようだが、オーストラリアの全地域でそういったサービスを受けられるわけではない。基本的には地元のオーストラリア人と同様の方法で賃貸物件を探すことになる。

賃貸物件の探し方は、realestate.com.auやdomain.com.auといったインターネット不動産サイトで探すのが最も一般的だ。希望の場所、タイプ(戸建て、集合住宅)、部屋数、家賃、家具付か家具無か、など希望の条件によって物件を検索し、気に入った物が見つかれば、その物件を管理している不動産会社に連絡して内覧をアレンジしてもらう。

物件を気に入れば、入居申込書に入居者全員の氏名、連絡先、勤務先、オーストラリアでの賃貸履歴、収入、緊急連絡先等を記載し、身分証明書や給与明細等と共に不動産会社に提出する。不動産会社はその内容を確認した後で物件オーナーと相談し、申込を受け入れるかどうかを決定する。受け入れられれば、家賃2週間分と、ボンドとよばれる保証金(4週間分の家賃相当額)の支払いが入居前に求められ、賃貸契約書が結ばれる。ボンドはResidential Tenancy Authorityとよばれる政府機関に賃貸契約が終わるまで保管され、問題が無ければ賃貸契約が終わった時に全額返金されるが、掃除の不備や物件のダメージ、未払い家賃等があれば、その費用がボンドから差し引かれる。賃貸期間は6か月か12カ月が一般的で、賃貸期間終了前にオーナーと賃借人の合意によって契約延長が決定される。

賃貸期間中、不動産会社が3、4カ月おきに物件を来訪し、入居時と同じ状態で使っているか、修理の必要がないか等を点検する。オーストラリアの賃貸契約は、日本に比べるとオーナー側の権利が強いとも言われている。借りる人にとっては日本よりも大変だと感じるかもしれない。

日本から来たばかりの方が現在の厳しいオーストラリアの賃貸市場において、自分で賃貸物件を獲得するのは簡単ではない。その方が、オーストラリアでの賃貸履歴が無い、オーストラリアでの就業履歴が無い、ビザによる滞在期間制限のため賃貸契約更新の可能性が無い、英語がスムーズに話せない、といった場合には、何十組というオーストラリア人申請者との競合においてプラスに働かない場合が多い。単身やカップルでの渡豪であれば、まずはシェアハウスでの生活からスタートするほうが簡単かもしれない。どうしてもシェアハウスは嫌だということであれば、不動産会社を通さずオーナーが自分で貸している物件を探すのも一案だろう。オーストラリア在住日本人向けの日本語ウエブサイト等でも、シェアハウスや賃貸住宅の情報が紹介されている。日本好きで日本人とシェアしたい、日本人に家を貸したいという人の情報を得ることができる。また各地域で日本人コミュニティのFacebookグループ等もあるので、グループに入って地域の情報を得るのも良いだろう。安全上避けたいエリア、交通事情、学校や病院の情報等、地元の人の生の声は賃貸探しで住所選定に役立つだろう。

日豪プレス
Jams.tv
DENGON NET
リビング.イン.ケアンズ

シェアハウスや個人貸しの物件でも一度賃貸履歴が出来れば、次に家を借りる時には不動産会社の審査も通りやすくなる。ちなみに不動産会社を通しての賃貸では、借りる人(世帯人全員)の収入合計が、家賃の3倍以上あるかどうかが審査基準の一つにされる。現在オーストラリアの賃貸家賃は上がり続けていて、日本と比べると決して安くはない、というより高い。参考までに2024年3月17日現在realestate.com.auで広告されているケアンズ、ブリスベン、シドニー、メルボルンの賃貸物件と家賃をご覧ください。家賃は週単位の豪ドルです。

Cairns North(ケアンズ市内中心から車で5分)
寝室2、浴室2、駐車1、プール共用 週家賃580豪ドル


New Farm(ブリスベン市内中心から車で10分)
寝室2、浴室2、駐車1、プール共用 週家賃1200豪ドル


Surry Hills(シドニー市内中心から車で約10分)
寝室2、浴室2、駐車1、プール共用 週家賃1050豪ドル


Richmond(メルボルン市内中心から車で約10分)
寝室2、浴室2、駐車1、週家賃795豪ドル

熊谷 美保

福岡県出身。2003年通訳・翻訳の勉強にオーストラリアのメルボルンへ。 2007年、ケアンズへと移り地元の不動産会社に就職。その後、当時のパートナーと不動産会社DJスミスプロパティを設立し、2017年に単独オーナーとなる。 ケアンズで不動産仲介、賃貸管理業務を行い、日本人のお客様にもご愛顧頂いている。 今は翻訳の仕事から離れているが、いつの日かオーストラリア人作家の作品を日本に紹介するのが夢。

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