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医薬ドキュメント関連の仕事<QC点検業務>の魅力

治験・申請関連文書投稿論文の品質管理業務。これを担うのがQC点検者です。数値・略語・用語を中心に、文書作成の根拠資料との突き合わせチェックを行います。
QC点検の対象となるドキュメント例は、治験薬概要書(IB:Investigator’s Brochure)、治験実施計画書(PRT:Protocol)、症例報告書(CRF:Case Report Form)、同意説明文書(ICF:Informed Consent Form)、治験総括報告書(CSR:Clinical Study Report)、コモン・テクニカル・ドキュメント(CTD:Common Technical Document)、投稿論文(Academic/Medical Paper)といったものです。QC点検者の需要は近年ますます増えており、やる気のある優秀な人材は常に求められています。
それでは具体的にQC点検者の仕事はどういった内容なのか、簡単に見ていきましょう。

QC点検とは

QCとは、Quality Control(品質管理)の略語です。
治験分野におけるQC点検は、「治験実施計画書や適用される規制要件を遵守して治験が実施され、信頼できるデータに基づいて結論が導き出されているかを検証する為に⾏われる品質管理活動」を指します。

翻訳校正とQC点検の違い

翻訳校正の場合、原文と訳文は多くの場合1対1の関係です。
QC点検では、複数の根拠資料を基にして、様々な観点から点検を⾏います。
QC点検の対象となるCSRやCTD等のドキュメントは、他の文書からの引用箇所、他の文書の翻訳箇所、試験結果を基に書き起こした(ライティングした)箇所で成り⽴っています。各箇所に適切な根拠資料に基づいた点検を⾏います。

QC点検業務に必要な知識

語学についてはTOEIC750点以上又は同等の英語力が求められます。
PC関連ではMicrosoft Office Word、Excel、PDFの機能が使えること。Wordの変更履歴、検索・置換機能、PDFのコメント機能などが使えることが必要です。
製薬会社やCRO(Contract Research Organization)等でCSRやCTD等の作成業務又はQC点検の実務経験のある方はQC点検者を採用する側にとって歓迎される人材です。また、未経験者でも、緻密な点検・確認作業をいとわない方やドキュメンテーション能力の高い方で、医学・薬学翻訳の学習経験がある方は、この業務に従事できる可能性があります。
たとえば、サン・フレア アカデミーの翻訳実務検定TQEの医薬分野で、65点以上を取得できる方は可能性が十分にあります。

QC点検では、さまざまな医薬関連の文書を読み込んでいきます。医薬翻訳者としてデビューするためのトレーニングにもなりますので、QC点検者としてキャリアを積むことは大いに意義のある仕事となるでしょう。また、医薬文書を丁寧に読みながら、数値・転記ミス・スタイル・フォーマット・表記の不統一を点検・確認し、文の構造の乱れ(文法的な)ミスを拾い上げ、文書全体をととのえていく過程は、医薬分野を専門とする方にはこの上ない喜びとやりがいをもたらすでしょう。

具体的に何を点検するか(8項目)

QC点検時のチェックリストを挙げます。(動画講座「日本語メディカルライティング基礎[入門編]」より)

① スタイル
・指定されたスタイル/テンプレートを遵守している
・フォント、ポイント、句読点の形式に従っている
・ページ番号、ヘッダー、フッター、版番号、日付が正確に記載されている
②  表記
・誤字脱字
・用語統一
③ 目次とセクション
・目次と本文ページが一致している
・各セクションの見出し(ナンバリング)と階層が正確である
・各セクション内の図表のナンバリングが正確である
④ 略語表
・本文で使用するすべての略語が記載されている
・初回使用時には省略のない完全な形で記載され、以降は略語が使用されている
⑤ 本文
・本文中の数値は図表及び原資料との整合性が確認できる
・図表番号が正しく引用されている
・本文とsynopsisの内容に齟齬がない
・それぞれ適切なモジュールから引用或いは参照されている
・図表や付録との相互参照が正しい
・本文中の小見出し等で番号が付与されている場合、書式が一貫しており正しく連番でナンバリングされている
・参照文献が正しく引用されている(番号及び内容)
⑥ 図表
・使用フォーマットが適切である
・タイトルの書式、罫線の引き方が統一されている
・図表タイトルが当該図表の内容を表している
・図表タイトルは他の図表タイトルと重複していない
・数値と単位が正確に記載され、原資料との整合性が確認できる
⑦ 脚注
・図表内で用いた略語の説明が脚注に記載されている
・補足すべき情報が補足されている
・脚注に原資料、原データ、引用元モジュールの図表番号などの補足がある
⑧ 参考文献
・バンクーバースタイルで正確に記載されている
・本文中で1回以上引用されている

具体的にどのように点検するか(10項目)

QC点検作業には、根拠資料を用います。対象となる文書により根拠資料には異なるものがありますが、多くの文書に共通するものを以下に示し、点検・確認作業を行う際の要点を説明します。

根拠資料:

テンプレート、文書作成ガイド、スタイルガイド、用語一覧、帳票(TFL:Table Figure Listing)、参考資料(同種同効薬の同じ文書)、文書中に引用されている参考文献などがあります。

作業を始める前に:

まず、テンプレート、文書作成ガイド/スタイルガイドを読んで、文書の構成、文書作成に関するルール、スタイルの要点を確認しておきます。

作業を行う際のポイント:

① 文書の多くは、テンプレートに文章を書き加えていくことにより作成されます。したがって、QC対象の文書を読み進めることで、作業を進めます。テンプレート中のセクションはライティングの過程で削除されたり、変更されていることがありますので、要注意です。

② 目次のある文書では、目次の点検・確認は最後でよいでしょう。セクションや図表の番号、タイトルが修正されていることがあるからです。

③ 本文が指定された引用元に基づくときには、引用元と本文を照合・確認します。また、翻訳の場合、翻訳ミスや抜けがないかを確認します。

④ 本文中に掲載されている図表は、帳票から正しいものが貼付されているか、確認します。表が帳票から貼付されたものである場合は、表中の数値を確認する必要はありません。表が帳票の数値を基に作成されたものである場合は、表中の数値を帳票と照合・確認する必要があります。

⑤ 本文中の数値が正しいか、本文に掲載されている表中から、本文に表の掲載がない場合は帳票から、確認すると共に、文章表現が数値と整合しているか確認します。その他、記載ミスや間違いなどがないかにも注意を払います。

⑥ 略語について、根拠資料として提供された用語一覧を基に確認します。通常、本文中に最初に記載された略語は定義を併記しますが、その後は略語のみを記載します。また、図表においてのみ使用されている略語を、文書中の「略語及び定義一覧」に記載するかは文書作成ガイドで、事前に略語の記載に関するルールを確認しておきます。

⑦ 本文中で、該当する図表やセクションを示すために、リンクが張られている箇所があります。リンクが正しいかも確認のポイントです。

⑧ CSRやCTDの安全性のセクションにおいて、有害事象の記載にMedDRA(ICH国際医薬用語集)が使用されます。事前に、MedDRAの使い方を確認し、慣れておくとよいでしょう。また、がん領域では、CTCAE(Common Terminology Criteria for Adverse Events:有害事象共通用語規準)が使われるので、こちらも事前に確認しておくとよいでしょう。

⑨ 本文中に参考文献の引用番号が付いているとき、番号が適切か確認します。文書の最後にある参考文献の一覧の書誌情報の記載に誤りがないか、確認します。書誌情報の記載の仕方は、多くの場合、バンクーバー方式です。バンクーバー方式について確認しておくとよいでしょう。また、医学文献の検索サイト:PubMedの使い方も知っておくと役に立ちます。

⑩ 治験・申請関連の文書の中で、ICFの読者は、一般の患者さんです。文章は分かり易い、平易な表現で記載するように求められています。QC点検の際には、その点を忘れずに、点検することが大切です。

以上、QC点検作業を行う際のポイントを10項目示しました。
QC点検の作業は、医薬翻訳やメディカルライティングを学ぼうとする方にとって、役に立つ、有益な経験となるでしょう。

QC点検業務の魅力を語る

実際に、(株)サン・フレアでQC点検の仕事に従事している方の声をご紹介します。

<サン・フレアQC点検者Y. M. さん>
私は文系から医薬翻訳・メディカルライティングの世界へ入りました。QC業務は細かくて手間のかかる仕事ですが、しっかりチェックできると、パズルがきれいにはまったような達成感があり、自分には向いているなと思います。サン・フレアでは10年以上QCを担当していますが、担当した新薬が承認された時は、私も少しでも新薬の承認にかかわることができ、世の中に貢献できたことをうれしく感じています。QC業務を始めてから翻訳実務検定TQEに合格し、並行して医薬翻訳にも従事していますが、末長く現役を続けられる息の長いプロを目指しています。

サン・フレアにはQC点検のお仕事がたくさんあります!
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