サン・フレアアカデミー

「TQE」合格者インタビュー

第97回 文芸(英文和訳)

高井さん

1.自己紹介をお願いします

第97回TQE「文芸」英文和訳に合格しました高井です。4回目の挑戦でした。2022年1月に会社を60歳で定年退職し、この先翻訳でお金を稼げるようになるため、日夜地道な勉強を続けています。

2.受検した言語の学習歴を教えてください

高校・大学は理科系で、エンジニアとして製造メーカーに就職しました。海外との業務に英語を使い、実用英検や工業(技術)英検、TOEICなどを通して主に技術系の実務英語を勉強してきました。英語圏以外の方々とも、英語を使えば意思疎通できることが喜びであり、モチベーションにもなっていたと思います。当時から海外小説が好きで、和訳本をよく読んでいました。

3.翻訳の学習歴を教えてください

歳とともに海外文学がますます好きになり、気に入った英語の小説を自分で訳し、プロの翻訳家によるその和訳本と読み比べたりしていましたが、あくまで自己流。本格的に始めたのは、定年を1年後に控えた2021年からでした。サン・フレア アカデミーの「クラシック編」や「ホームズ編」を受講し、商品として通用する文芸翻訳のあるべき姿を学びました。
また文芸とは別に、エンジニアの英語経験が活かせる特許翻訳(機械)についても、その少々独特な翻訳手法を同アカデミーの初・中・上級コースを受講し学習しています。

4.何がきっかけで翻訳者を目指そうと思いましたか

原文と翻訳家の訳文とを付き合わせると、英語から日本語へ、原作者の意図や感情を再現しつつ、日本語らしい文に仕上げられていることに驚きました。どうしたらこんな文章が書けるのか、自分にもできないかと思ったのがきっかけです。自分なりに工夫して納得のいく言い回しを組み立てられた時の爽快感(自己満足感?)は病みつきになります。そういった訳文を多くの人に見てもらいたいという気持ちが芽生える一方、定年退職後の何がしかの収入源として期待していたのも事実です。

5.TQEを受検したきっかけは何ですか

客観的に自分の翻訳力を評価してもらいたかったからです。試験時間が比較的長く(4日間)、思う存分推敲できることも魅力でした。また、合否のみ、あるいは全般的なフィードバックしかもらえない他の資格試験とは違い、TQEでは各受験者個人別のアドバイスをいただけるので、どこがまずかったのかを理解できます。試験というより学習機会として活用できました。

6.TQE合格のために苦労した点、悩んだ点はどういったことでしょうか

私はもはや60歳。頭が固くなり、思い込みや癖がなかなか抜けません。たとえば3人中2人で会話している場面があるとします。3人目の人が1回だけ口を挟んでいるのに、それを2人の会話の続きだと思い込んで訳してしまう。また、過去形の英文が続く時に、日本語の文末が単調になることを恐れて必要以上に現在形に変えてしまう癖などです。自分の訳文を何度も読み返しますが、その本人がレビューするわけですから不自然さに気付けません。

7.苦労した点、悩んだ点はどのように解決されましたか

サン・フレア アカデミーのプロの先生(斎藤静代先生)による講座で私の文に詳しいコメントをいただき、次第に自分の日本語が万人に受け入れられる表現に軌道修正されていくのを感じました。それでも腹落ちできない点は質問して突き詰めました。知らず知らずにまとわりついていた独特の癖を自覚した上で、自分の表現を一歩引いて眺めることを心掛けています。

8.合格した分野を受検するために参考にした書籍等はありますか

文芸翻訳では、HOW TO本より実地練習のほうが役立つと思います。書店の海外文学コーナーで好きな小説の和訳本を買ったあと、通販でその原作本を購入。自分で1文ずつ訳して和訳本と比べていました。たまに著名な翻訳家のケアレスミス(potatoをトマト、socksをハンカチと訳したミスもありました)や訳抜けという、アラ探しの陰湿な成果物で自分を励ますこともできます! ただ、そういう「自習」では自分の翻訳レベルやスピードを推し量ることはできますが、やはり商品として翻訳するには、上記のとおり一度はプロによる指導が必要だと思います。

9.翻訳者としてのこれからの計画を教えてください

今回合格点はいただきましたが、出版されている和訳本を読むたびに、自分の未熟さを痛感します。日本語ならではの表現をもっと勉強して文芸翻訳を極めたいです。それと同時にエンジニアとしての経験も活かしたいので、特許翻訳などの勉強を続けます。翻訳支援ツールも使いこなせるようになりたいです。

10.TQE合格を目指す方々にメッセージをお願いします

他の翻訳と同じく、文芸作品の翻訳力も一朝一夕には身に付かないと思いますが、普段から海外翻訳小説などに親しまれている方々にとっては、敷居が低いのではないでしょうか。多彩な日本語表現を巧みに操って、採点者を唸らせるような答案を出してみませんか?

「TQE」概要