第102回 医学・薬学(和文英訳)
松本さん
1.自己紹介をお願いします
第102回TQE「医学・薬学」和文英訳に合格した松本です。2年半前に定年退職してからTQEへのチャレンジを始め、今回が6回目の受検でした。
2.受検した言語の学習歴を教えてください
英語の習い始めは中学ですが、中高を通じて一番好きな科目で、大学は語学大学を選びました(専攻は仏語でしたが)。就職先では主に海外営業を担当し、スペイン、米国、ドイツ、英国で計20年にわたる駐在を経験しました。スペイン以外では英語で仕事・生活をしていましたので、駐在20年のうち約15年間は生きた英語を学ぶことができました。
3.翻訳の学習歴を教えてください
海外駐在中は、楽しみのために翻訳をしていました。海外小説を自己流に訳したりしていましたね。しっかり学ぼうと思ったのは定年退職の7~8年前です。漠然と定年後のことを考えていました。通信講座で文芸や社会・経済など、文系の自分に手頃な分野を中心に5~6年間、和英/英和とも広く学びました。いよいよ定年が迫ってセカンドライフを明確に意識したとき、気になっていた医学・薬学に分野を絞り、サン・フレア アカデミーの中級講座「医学・薬学」(通信科)を受講しました。定年の2年半前、今から5年前のことです。その後、上級講座、実践講座を続けて受講しました。
4.何がきっかけで翻訳者を目指そうと思いましたか
語学が性に合っていたので、大学卒業時には就職するか、翻訳者になるかで迷いました。結局は就職を選びましたが、翻訳への思いは保ち続けていました。特定のきっかけがあったのではなく、気がついたら翻訳者を志向していた感じです。文系なのに医薬翻訳者を目指した理由は単純な興味からです。ライフサイエンスには昔から関心がありました。今さら研究者にはなれませんが、医薬翻訳者になればまだいろいろと学べると思いました。
5.TQEを受検したきっかけは何ですか
楽しみのために翻訳をしていた頃と違い、今回はプロになることが目標でしたので、講座の選択にあたっては出口が見えること、仕事につながることを第一に考えました。ネット検索の結果、TQEが出口のひとつとして最適に思えました。こんなに難しい試験だとは思いもしませんでした。
6.TQE合格のために苦労した点、悩んだ点はどういったことでしょうか
ライフサイエンスに興味こそあれ、体系的な知識はありませんでしたので、当初は原文の意味が完全にはつかめませんでした。理解しているつもりでも、その背景がわからないため皮相的な理解に留まり、講座の課題やTQEの答案が浅い直訳になりがちでした。知識不足による原文解釈ミスを指摘されることも多々ありました。訳文の意味が分からないと酷評されて、分野選択を誤ったかと悲観したこともあります。
7.苦労した点、悩んだ点はどのように解決されましたか
翻訳技術については、講座テキストとTQE過去問を何度も復習したり、テキストやTQE、その他の文献から用語や対訳のDBを作ったり、オンラインセミナーを受けたりして弱点克服を目指しました。
医学・薬学の知識習得にも時間をかけました。体系的に学ぶのは高校以来の生物学や化学、さらには遺伝子工学、免疫学、薬理学、薬物動態学、臨床試験関連、医療統計等々、幅広い基礎構築を目指しました。書籍やウェブサイトで分かりにくい場合は動画を観て理解するようにしました。動画には本当に助けられました。これらはすべて現在も継続中です。
8.合格した分野を受検するために参考にした書籍等はありますか
翻訳技術については、最良の参考書は講座テキストとTQEでした。講座の課題添削やTQEの講評は、自分に足りない要素を理解する上で大いに役立ちました。「翻訳の泉」もDB化して常に参照するようにしました。
医薬分野の基礎知識については、さまざまな書籍・動画を参考にしましたが、中でも『新・大学生物学の教科書(全3巻)』は繰り返し読んでいます。文系の医薬翻訳者の出発点としてとても有用な書籍だと思います。図が豊富なため、理解しやすく読むのが楽しい書籍です。
9.翻訳者としてのこれからの計画を教えてください
TQE以外にもいくつかトライアルに合格し、翻訳者としての実務をスタートさせています。しかし、気持ちの上では8:2か7:3の比でまだ学習者です。翻訳者として信頼していただけるよう今後も翻訳技術を磨き、医薬分野の勉強を継続するつもりです。TQEでは英文和訳の合格も目指します。
10.TQE合格を目指す方々にメッセージをお願いします
不合格の通知が届くと気持ちが折れますが、講評を読むとその理由に納得させられ、指摘内容が身体の深いところに響く感じがします。ですから不合格の度、TQEほど良い学習教材はないと思うようにしてきました(そうすることで辛さが少し和らぎます)。今回、幸いにも合格できましたが、厳しい講評もいただきましたので、これが終わりだとは思っていません。今後もチャレンジを続けて、新たな学びの機会を得たいと思っています。皆さん、ともに頑張りましょう!